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ぼくりり アルバム「Noah’s Ark」歌詞の意味[Shadow]編2

Noah's Ark

Shadow 後半の歌詞いきます。

ここは、ちょっとやばいです。

わざとちょっとわかりにくくしてる感じなので、平たくします。

あと、フリッパーズとの比較、ファーストアルバムでの恋の歌との違いなんかも書きます。

そしてなぜか話の流れでSuchmosが出てきます。

 

shadow

shadow

 


代わり映えしない毎日に混ぜた毒は
劇薬 脳天刺すアドレナリン

 

意訳すると、
最初は退屈な毎日に与えるちょとした刺激のつもりだったのに、
まるで劇薬、想像以上の体験に、やめられず何度も関係を持ってしまった。

 

繰り返した過ちはもう数えない
自己嫌悪に苛まれた 戻れない


やがてそこに想定外の感情が芽生えてしまった。
こんな関係じゃいやだ、もう戻れない、ただの過ちにはしたくない。(自己嫌悪に苛まれた 戻れない)


それなら前に進めるしかない。(繰り返した過ちはもう数えない)

 

淡い期待の後 洗い浚い吐いた

ひょっとしたら受け入れられるんじゃないかと、思い切って気持ちを伝えてみた。(淡い期待の後 洗いざらい吐いた)

荒い種を蒔いて 変わり果てた明日


でもそこに未来はなかった。(変わり果てた明日)

口に出して言ってしまったことを「荒い種 をまく」って表現しています。

口の端に置いて 繰り返しにピリオド

「さようなら」


ならいっそもうこの関係を終わりにしようと決めて、
心とは裏腹の(口の端に置いて )「さよなら」を言おうとしている。

こんな感じ。


「まいにち」「まぜた」「(さいな)まれた」の「ま」
「あやまち」「あどれなりん」「あ」
「どく」「げきやく」「だ行」
「さす」「さいなまれ」の「さ」
「かぞえない」「もどれない」の「ない」
「あわい」「きたい」の「たい」
「あらい」「ざらい」の「らい」
「はいた」「あした」の「した」
「まいて」「おいて」の「いて」
「くち」「くりかえし」の「く」
などの言葉のリズムも見事。

再度


今 目を逸らせば
消える幻みたいな君がいる

と繰り返しが来るので、
もう、ベッドで「ぼく」のそばに横たわる彼女に「さよなら」を口に出そうとして言えない様子が浮かんできます。

そうすると前半の


まだ見えないままのsunshine
今この目に焼き付けるよ

ここも、朝が来たら別れを告げるつもりで、
最後の彼女の姿を目に焼き付けている、というイメージが浮かんできます。

 

アルバムコンセプトにそぐわないような恋愛の歌、
とおもったら想像以上に色っぽい歌作ってきたぼくりりくん、やるじゃん、かわいい顔して。

 

でも自分の体験ベースじゃないよね、これ。それが残念。
(実体験だったらそれはそれで問題ですけど)

 

フリッパーズはこういう曲は書かなかったんです。
「僕の特別なバナナ/だらしなく甘い色を塗ろう」

と性的メタファーは使ってるのに
「恋もキスもセクシーも少し待って君と僕は/そう思うだろう?」(グルーヴ・チューブ -GROOVE TUBE-)だし、

 

グルーヴ・チューブ -GROOVE TUBE-

グルーヴ・チューブ -GROOVE TUBE-

  • FLIPPER'S GUITAR
  • J-Pop
  • ¥150

 

男の子の場合恋の歌は堂々と書きづらいらしいですが
その分フリッパーズはちゃんと等身大を書いてた気がする。あと、結構女の子と楽しく遊んでる曲が多いです。そこはぼくりりと違うかも。


その後の小沢健二の歌詞も全てそうですが、あえて直接表現を避けてた気がします。
小沢健二オザケン時代に「子どもからお年寄りまで楽しめる曲を作ってるつもり」と言ってますしね。

 

そういえばSuchmosもラジオでオリジナルラブ田島貴男と対談して

田島さんにSuchmosに「ラブソングは書かないの?」って訊いていて
メンバーが「まだそこまで煮詰まってない・・っていうか、恥ずかしい?」「うん」みたいな会話があって、(作詞に対して)正直だなと思った記憶があります。それで田島さんがSuchmosにハッパかけてて微笑ましかった。

あと、「煮詰まる」の日本語の正しい使い方を知ってるんだなって感心した。

(これ言ったの誰かな・・・メンバー何人かいたのでちょと定かではないけど、YONCEかな。SHUかもしれないけど)

これ聞いて、Suchmosがラブソング書く時がきたら、どんなのが来るのかすんごい楽しみになりました。

だってちゃんと素直に書いてくれそうでしょう?

 

・・と思ったら意外にも「STAY TUNE」に(おそらく)YONCEの恋愛観が変なところに出ていた。

 

piria.hatenablog.com

 

ぼくりりに戻ると、

「一瞬であれ」の「あ」に限って「や」に近い発音をしているみたいで
「一瞬でやれ」って聴こえます。

でも全て「や」に聴こえるわけでなくて、よーく聴くと、この最後のパートは違います。


この刹那だけが
ぼくをぼく足らしめる
一瞬であれ

一瞬であれ

歌詞はこうですが、ここはこんなふうに聴こえます。


一瞬であれ

一瞬でやれ

ここなんで歌い方変えたんでしょうね。

 

アルバムの中では異色の曲ですが、色を添えていて良いと思いました。

フックが多くて、2重に深読みできたりする歌詞が好きなので
(他には90年代のオザケンとかそうです。フリッパーズほど難解ではないのに。)
このアルバムの中ではお気に入りの曲です。

 

1stの「hollow world」に入ってる「Venus」をより突っ込んで別な曲に書き直した感じもします。
「Venus」は1stの中ではあんまり人気がない曲みたいですけど、女神と、金星を掛けていて、面白い曲だと思います。


サウンドが宇宙的になってるんですが、内容は恋心というか、女性に対する憧れみたいなものを歌ってるんですね。

 

Venus

Venus

 
恋愛の歌、にはまだならなくて、姉妹がいなかったり、まわりに女の子がいない、あんまり深い付き合いしたことがない男の子が女の人に対して持つイメージってこんな感じ、っていう曲です。

 

他にも「あなた」とか女の子らしい存在がでてくるっぽい曲がいくつかあるんですけど、ちょっと突き放した感じというか、最初から距離作ってる感じで、ラブソングとはいえない。

そういう意味では「Venus」の方が等身大で好感持てるかな。

ちなみに「Venus」はイヤホンプレイ(出典:星野源)が楽しめるのもポイント。


そういう意味では正直で、ぼくりりが今もってる女性観がちょっとわかる曲です。
なので、これは焼き直しっていうわけじゃなくて、1stの頃と女性観がそんなにまだ変わってないっていうことだと思います。

「淡い期待の後 洗い浚い吐いた
荒い種を蒔いて 変わり果てた明日
口の端に置いて 繰り返しにピリオド」とか、なかなかうまいこという。

 

この曲「shadow」があることで、このアルバムの構造が
・「ノアの方舟」と救済というコンセプト(表)
・失恋からの自立(裏)
両方の意味に読めるようになります。

ノアの方舟」とか宗教的でとっつきにくい、と思うなら、失恋からの自立、という裏テーマがあると思って聴いてもらうと楽しいんじゃないかな。

あとでそういう方向で組立てた曲目と曲順(プレイリスト・セットリストみたいなもの)を書きます。

 

Noah's Ark

Noah's Ark

 

 

 

 

 

 

 

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