ぼくりり「Noah's Ark」と小沢健二「流動体について」と坂本龍一「async」と
前回ぼくのりりっくのぼうよみ (以下ぼくりり)の「Sky’s the limit」が良いよという話をしましたが、歌詞の本当に意味するところを書ききれませんでした。
「Sky’s the limit」をフックとして、より掘り下げて歌詞の意味を考えてみたいと思います。
わたしが輝く
We are beautiful
なぜ前半は『「私が」輝く』なのに、
後半は「We are beautiful(私たち) 」
なのか。
その意味するところは、先にリリースされたアルバム「Noah’s Ark」を聴けばわかる、という話をしました。
この「Noah’s Ark」、とても良い出来なのですが、リリース半年経ったアマゾンを見てもレビューが少ない気がします。
とても残念です。これはもっとたくさんの人に聴いて欲しい。
レコード会社も結構お金かかってそうなMV作ったり、「ぼくりり」とこのアルバムには力を入れてるように見えますが、もうちょっと反響あってもいいような?
世界観が暗すぎる?いや、ちゃんと救いが用意されてるしそこが肝なんだけどな。
レビューするの難しいんですよ。これ。
公式に言われているように、これは旧約聖書の「ノアの方舟」のお話をモチーフとした、コンセプトアルバムです。
アルバムが一つのストーリーとして構成されているので、最初から最後までシャッフルしないで聴くことに意味があります。
アルバムのメッセージは、結論から言うと、
小沢健二「流動体について」、坂本龍一「async」と今年立て続けにリリースされている音楽たちと同じです。(タイトルは若い順に並べてみました)
というかほぼ同時期にこれらの音楽がリリースされたことが異常事態です。
なので、結構引っかかってしまった。
小沢健二と坂本龍一と並べちゃうの? と言われそうですが、むしろ最も言いたい事言っちゃってるアルバムだと思います。
そこは若さ全開、若さの特権。
小沢健二「流動体について」、坂本龍一「async」のメッセージに共鳴した方なら、このアルバム聴いたら必ず唸るはず。
引っかかった理由にはもう一つあって、「ぼくりり」に感じるフリッパーズ感です。
メロディラインの美しさ、声の甘さ(小山田)
語彙が豊富で、言葉遣いに品があるところ、詩で韻を踏むところ、内的な闇や影(小沢)
こんなところは共通点かなと思って、
だったら小山田と小沢の才能が一人の中に共存しているわけで、だったらすごいこと。
アンファンテリブル再来といってもいい。
他にもフリッパーズ好きなんだろうな、と思わせる音大生(気になる方は「Have Fun」聴いてみて)がいるんですけど
(ギターポップだし、歌詞はフリッパーズの「カメラ!カメラ!カメラ!」っぽい。
フリッパーズをちょっとゆるくした感じ。)
おそらく本物のフリッパーズを聴いていた世代には物足りないでしょう。
ぼくりりはこのアルバムで、ある意味フリッパーズが行き詰まったところを超えてしまっていますし、坂本龍一が「async」で問題提起したその答えを提示してしまっています。
(ぼくりりになぜそれができたのかは聞き込んでわかってきたのでおいおい書いていきます。)
ぼくりりの1stアルバムの方は、一曲一曲が独立しているからわかりやすかったかもしれませんが、
こういうコンセプチュアルなアルバムは、まだ若い人、おそらく10代が多いと思われるぼくりりリスナーには、聴いてもようわからん、ということになるのではないかなと思います。
私もフリッパーズ聴いてた頃は子どもだったので、なんとなくいいな、と思って聴いていただけで、歌詞の意味とかあまり考えていませんでした。
(なんせ1stアルバムは全曲英語詩だったし、最初の曲「Hello」だけ辞書引きながら聴いてみて「わあ素敵」って思ったけど、辞書引きながらだと面倒だし、聴いてるだけで心地よかったからそのままでいいや、と和訳放棄。わかったのは、とにかく外国の児童文学のかおりがする、ってことだけ。)
「ぼくりり」は「ぼくのりりっくのぼうよみ」という名前で敬遠していたところがあって、
「変わった名前のミュージシャン? がいるんだな、ラップなの?あんまり得意じゃないな、まだ10代なの? 若いね、でも私たちの世代にもフリッパーズがいたし、私たち的に彼らを超えるなんてことないよね。」
くらいに思っていて、「SKY's the limit」を耳にしてみたら、きれいな声と心地よいメロディラインに惹かれて、ならばとこのアルバムも聴いてみたらその思想性にびっくり、という。
なのでシャッフルしないでアルバムの収録曲を順番に解説していきたいと思います。
小沢健二「流動体について」、坂本龍一「async」を聴いてるような方にはもはや解説不要、「Noah's Ark」聴いただけでぴんときちゃうかもしれませんし、
坂本龍一さんは「async」はすごく好きで実際結構聴いてますが、世代じゃなくてあまり多くを語ることはできません。
つたない解説にきこえるかもしれませんが、どうかぜひご一緒に。