ぼくのりりのアルバム「Noah’s Ark」歌詞の意味[Be Noble]編
ぼくのりりのアルバム「Noah’s Ark」歌詞の意味[Be Noble]編です。
歌詞の解説と、ぼくりりとフリッパーズとの比較をちょっと書きます。
この「Be Noble」歌詞、少なくとも2つの意味があるので、一応最初はアルバムの中での位置づけとしての意味を書きます。
それが終わったら2つ目の意味を書きます。
「Be Noble」はアルバムのリード曲です。とてもいい曲。
この曲は「Be Noble」EPとしてシングルカットもされています。EPの方には「Be Noble (re-build)」も収録されているので、違いを聴き比べてみるのも楽しいです。
単なる リミックスじゃないよ。
(2曲の違いもまた後で解説します。)
アルバムに収録されている「Be Noble」はテンポ早めのロック調の曲です。
歌詞は、全体的には、思春期特有の不安定な自我、自意識と衝動とのヒリヒリするような葛藤、
大人(が作り出した世の中)への苛立ち、
それを克服して前に進もうとする姿、そういうものをきれいな言葉で描いていると思います。
映画「三月のライオン」(神木隆之介版)の前編の主題歌になっていて、ぼくりりくんは、劇中で主人公が叫ぶシーンをヒントに着想した、と言っていました。
叫んだり走ったりするのは「思春期の少年あるある」シーンです。
(ぼくりりり君は神木隆之介くんに似てると思っていたのですが、テレビでぼくりりくんが神木隆之介くんと並んで座っていたら神木隆之介が男っぽくなっていて以外と似てませんでした。やっぱり似てるのは宇野昌磨+口元が川口春奈かな。特にスカイズザリミットのMVの時)
ちなみに「三月のライオン」後編の主題歌は藤原さくらのスピッツのカバー「春の歌」なのですが、こちらも良いです。
比べちゃうと歌は草野マサムネの方がやっぱりいいかなと思うけど、藤原さくらの方はアレンジがいい。(後で書けたら書こうかな。藤原さくらも好きですよ)
聴き比べ
結論からいうと
「Be Noble」の趣旨はこのフレーズに集約されていると思います。
誰よりも自分が誇れる自分になりたいよ
これはこういうメッセージの歌、と思って他の部分をざっくり、思春期の自意識と衝動とのヒリヒリするような葛藤と自立への決意と思って聴いていてもいいと思います。
でもこのアルバムの中ではもうちょっと違う意味があります。
冒頭より
埋まらない空白を埋めるために来たのに
(中略)
失うのが怖くて伸ばせないこの手を
叱りつけて前へ進む 進む
繰り返されるフレーズです。
これからこのアルバムの中で展開される物語は壮大で、かつ深いメッセージがあります。
結構、今の世の中ではこういうことを言うのはタブーです。
だから出すのに勇気がいる。
(今の小沢健二がやったこともそう)
これを言ったら失ってしまうものがあるかもしれない、それを恐れています。
でもこれをやるんだ、前へ進むんだ、という強い意気込みを現してる。
(ぼくりりはこれは情報の波に飲まれる人々の姿を描いている、と公式には言っています。
それなら特に問題ないのですが、本心はたぶん違う、ちょっとエクスキューズ入ってるなと思っています。)
こんなところがぼくりりらしいところでしょうか
盤上に広がる森羅万象
淀んで煤けて滲んだ感情を
全部ひっくるめて叩きつける
「ばんじょう」「ばんしょう」
「よどんで」「すすけて」「にじんだ」「かんじょう」の「て(で)」「サ(ザ)行」がリズムを取っています。
「盤上」っていうのは、将棋がテーマの映画だからそこにも掛けてる。
ここの歌詞もいいです。
虚構の月 照らし出す 鮮やかな色で輝けないよ
「吹きすさぶ冬 穏やかな春」「盤上に広がる森羅万象」という自然界の事象から「虚構の月」「鮮やかな色で輝けないよ」っていう心象風景に繋げて来るところとか見事。
「月」は自然界のものだけど、「虚構の月」になると自然界のものではなくなります。だから「鮮やかな色で輝けない」んだけど、この意味は後で説明します。
(だいぶ後。裏の意味になるからアルバム解説が終わってから)
代わり映えしないない世界に吐いた 届く宛もない呪いの言葉 肩書もなんも取っ払ったら 最後に僕に何が残る?
今の世の中に不満を持っています。でも一人文句を言っても何も変わらない。
だからそれを変えるために「前へ進む 進む let it go」って自分を奮い立たせてます。
どうせ全部蜃気楼と大差ない選民思想
壊死しそうな心の在り処(ありか)一体何処(いずこ)
この歌詞は、ぼくりりが自分はちょっと選ばれた人間だと思ってることもわかります。
「肩書き」は大学生(多分そこそこ有名な)、高校生でデビューして、世間では早熟の天才、って言われてる人。
そんなのがなくなったら僕に何が残るのか
ちょっと選ばれた人間だって思ってしまっているけど、そんなの蜃気楼みたいな幻想なのにね、って自分を見ています。
こういう俯瞰した目で自分を見るのが特徴みたいですね。
ありかを「在り処」と書いたり「どこ」と言ってもいいところを「いずこ(何処)」と書いたりする漢字の使い方が特徴的ですが、この辺りの漢字の使い方が椎名林檎っぽいなと思います。
巻き舌歌唱法も、同じく早熟の天才だった若き日の椎名林檎を彷彿とさせます。
ぼくりり君自身、ライブでも椎名林檎の「本能」をカバーしたりしているみたいなので、もちろん聴いてますね。(っていうか事務所が椎名林檎の元いた事務所なのね。今在籍していないけど)
あー懐かしい。ナース服でガラス叩き割る林檎嬢。すっかり変わっちゃった。
吠えたてる獣 一番弱いとこ引っ掻き回してく
自分を捨てれば楽なのかな
この歌詞の「吠え立てる獣」は自我や自意識、プライドといったもの。
多かれ少なかれ皆持っているものだけど、それらが暴れると傷つきやすくなる。
ぼくりりは結構強い自意識があって、(だから選民思想とか出て来る)それに悩んでいるかもしれない。
誰もが相対する己の内に介在する
「相対する」って出て来るから、二面性があるってことも匂わせてます。
ぼくりりの歌詞には「楽なのかな」って良く出て来るので、楽になりたいみたいです。
できれば楽したい、って気持ちと、苦しいから楽になりたい、の両方かな。
この曲はこの曲は映画のタイアップ曲ということもあって架空の主人公を設定していると思いますが、ぼくりり本人の心情も入っていると思います。
ぼくりりはオープンなようでなかなか本心を見せないところがある気がするのですが、架空の主人公を作って言いたい事を言ってもらってる感じ。
「Be Noble」というタイトルに違わず、ラップにしては言葉選びがとても上品です。
品のある言葉選び、語彙の豊富さ、メロディセンス、若さ、自意識、世界への反抗、瑞々しい声っていうとフリッパーズ
(フリッパーズギター。小山田圭吾と小沢健二がかつて組んでいたユニット)という先例があるんですが
フリッパーズなら「3 a.m. op / 午前3時のオプ/カメラ・トーク」とか世界観が近いかな。
「17歳の僕」「雨の中大声で笑う/誰も聞かない声で叫ぶ」
「午前3時の熱く焼けたアスファルト(夜中なんだからあり得ないでしょう?)」
若い人で「ぼくりり」好きでフリッパーズ知らない人はちょっと聴いてみて欲しいです。
でも、この曲は似てるようでちょっと違う。
ぼくりりの「Be Noble」がフリッパーズと違うのは、前へ進もうとしてるところです。
だからこの曲はフリッパーズっぽいようで、フリッパーズではない。
こういう姿勢は1stアルバムの中にもなかったと思うし、このアルバムの中でも特異な曲だと思います。
だから、「Be Noble」は、ぼくはこれからこのアルバムの中で始まる物語を勇気を持って語る、っていう決意表明の歌かなと思っています。
(でも聴いてるとやっぱ途中で決意が揺れてきちゃうんですよね。その辺を聴くのもおもしろいんですけど。)
それから、まだ少しミステリアスな部分もこの曲にはあります。
失うのが怖くて伸ばせないこの手を
What I do without you
「ぼく」は何を失うのが怖いのでしょうか?
What I do without you の「you」とは誰(何)を指すのでしょうか?
残る瘡蓋 引き剥がして やるせない思いを
叱りつけて前へ進む
「やるせない思い」「残る瘡蓋」という言葉にはどことなく切ないニュアンスがありますが、何がやるせないのか、「瘡蓋」とは何なのでしょうか?
「叱る」という言葉は悪い事をしている時に使われますが、「叱りつける」ほど悪い事とは何なのでしょうか?
などなど。
次の曲「Shadow」を聴いた後、この曲「Be Noble」を聴くと、解釈に新たな意味も生まれてくるのですが、
「Noah's Ark」のアルバム解説という話が横道にそれてしまうので、
それは「Be Noble」の裏の意味・解釈その2、としてのちほどゆっくりコメントすることにして、ここはひとまず次の「Shadow」に移ります。
2017.6.13加筆修正
- アーティスト: ぼくのりりっくのぼうよみ
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2017/01/25
- メディア: CD