宇多田ヒカル 大空で抱きしめて/道サントリー南アルプスの天然水CM曲の歌詞を聴いてみた/椎名林檎のお仕事
サントリー南アルプスの天然水のCMが変わっていました。宇多田ヒカルが水の山に登る、っていうのは同じなんだけど、使用曲が
から
に変更になりました。
(ちなみに宇多田ヒカルはレコード会社移籍もしたみたいです。EMI→ソニー
CMみて、曲は前の方がよかったな、って思ったんですが、一応、大空で抱きしめて、をフルで聴いてみました。
うん、悪くはない。
サントリー天然水『水の山行ってきた 奥大山』篇 60秒 サントリー CM
道 はテレビから流れてたら思わずそっち見ちゃう、で、また聞きたくなってCM見ちゃうっていう力が歌にあったんですよね。
今回はどうでしょうか。
ただ、歌詞はちょっと面白いことをしているところがあります。
主語が基本私なんですが、1箇所だけ僕になる。
今回の曲のテーマは、会えなくなった人に、夢の中でしか会えないなら朝まで抱きしめて、っていう歌なんですが、夢の中でしか会えない、ってことは、もう現実世界にいない人じゃないかなと思います。
一応、抱きしめてだけじゃなくてキスをして、って歌詞で歌ってるから、おそらくは亡くなった恋人、って設定になってるのでは。
私は地上にいて暮らしています。
晴れた 日曜日の改札口は
誰かを待つ人たちで色づき始め
今日はどこか遠くへ行きたい気分
空の見える場所へ
私さんは日曜日が休みのOLさんか何かみたいです。
なぜ空が見える場所へ行きたいかというと、その恋人が空にいるから。
僕はまだあの頃のまま
青空で待ち惚け
夏の花が散る頃には
笑顔で僕を迎えに来て
僕は時間が止まったまま待っている。
でも、迎えにきて、夏の花が散る頃、っていつでしょう。
今年の夏の終わりだったら、ちょっと怖い。
わかっているわ、欲張りなのは
でも最後と言わずにキスをして
もし夢の中でしか会えないなら
天翔る星よ 消えないで
夢の中でしか会えないなら、星よ消えないで、っていうのは、やっぱりこの世にいない人なのかな、と。
私さんがおしゃべりで相手を誤解させて怒らせるような何かがあって、私さんが意地っ張りでどっちかっていうと「私」さんが悪いんだけど、傷ついたのはお互い様だと私さんは言ってる、で、「僕」はもう許してくれてるんだけど、空に昇って行っちゃった人だからもう会えない。
これもやっぱりモチーフはお母さんじゃないかな、って思います。
やっぱりそれは「道」含め
Fantômeってアルバムで出し切っちゃってるかなって感じがしていて
それくらい、道、って曲に魂がこもってるし、だから聴いてて心が洗われるような感覚がある、と思うのです。
サントリー天然水『水の山行ってきた 南アルプス』篇 60秒 サントリー CM
わたしの心のなかにあなたがいるいついかなるときも一人で歩いたつもりの道でも始まりはあなただった
やっぱりいいな。このパートとその続きの箇所(つまりCMで使われている所)が好きなんだけど
調子に乗ってた時期もあると思います
とか本人の心情が素直に出ている曲でもあります。
光も好き。これも最初に結婚した時の歌だったな。
英語バージョンもあって、こっちはsimple & cleanってタイトル
道に比べて、今回の歌詞の方がきれいにまとまっていると思います。
今回は、同じモチーフをちょっと角度変えて作り直してみた、逆にいうと、前回の曲、道を作った時みたいなモチベーションは今なくなってるのかも、って感じました。
子供が小さい子育て中ってどうしてもそっちに関心がいっちゃうし、椎名林檎もそうだったし。
宇多田ヒカルの歌い方が変わって、切なさ成分が減ってしまったのもあります。
(花束を君に、を聴いたとき、宇多田ヒカルが歌ってると思えなかった)
今回は切ないシチュエーションの曲なのに、以前切ない歌を歌ってた時のような切実さが消えていて、以前の宇多田ヒカルからしたら物足りなさを感じてしまいます。
その分聴きやすくはあるけど、道は、重いけど聴きやすくて、ある意味賛美歌を聴いてるみたいな気分になれたから、ちょっと落差を感じてしまったのかも。
「道」が良すぎた。
今回もイントロのポロンポロン聴こえる楽器とか弦楽器のアレンジとかはいいなと思います。
椎名林檎も子供産んだ後、モチベーションなくなっちゃって、もう引退しようと思ってたのに会社が離してくれなくて、自分では今曲が書けない、ってことで、カバーアルバムを出したりしてました。
それはそれできっちり仕事として完成させています。
(こういうカバーはアーティストのルーツを知る、っていう意味で興味深いです。)
大空で抱きしめて、も何回か聴いたら印象変わるかな?と思いつつ、どうも、曲を聴いていて、今回の曲は、「お仕事」って感じ、自分の中から何か出したいものがある、っていう感じではなさそうで、あるとすればお母さんの残像がまだ消えないこと。
この歌はフィクションだけど、
「本物」がここに・・・
夢しか会えなくなって
あなたの面影なんか
小さくたたんでしまって
やさしく生きるためにいいでしょう
その点、宇多田ヒカルは去年は「お仕事」の中にも全部プライベート出してたところがあるような気がします。
は、花束を君に贈ろう、愛しい人、って歌うけど、2番の歌詞を聴くとこれはお母さんとの別れの歌、っていうことがはっきりわかるので
朝ドラ主題歌、っていう依頼されたテーマを逸脱してるような気がしていました。
テレビで使われるのは1番だけだけど、朝ドラ見ながら、このドラマの内容とこの歌の歌詞ってどうリンクするのかな?って疑問に思ってたけど、最後までドラマとどう結びつくのかわかりませんでした。
(はじまりと終わりの間で忘れぬ約束をした)
同じ「お仕事」でも、プロのお仕事をするのが椎名林檎。
ドラマの「カルテット」に書いた
は、ドラマの世界観をきちんと把握しつつ、それをちょっと超えるようなものを出してきています。
後半で転調するんですが、転調した後のそう人生は長い、世界は広い、って歌詞と曲に急に世界が開けるようなカタルシスがあります。
ドラマのストーリーとかがまだそこまで決まってない時に作ったはずなのに、ものすごくシンクロしている。
椎名林檎はリオデジャネイロオリンピックの準備で忙しい合間を縫って、打ち合わせもあまりできなくて、それで出来たのがこれ、っていうんですから参った。
この人はほんとにプロ意識高いなと。
大空を抱きしめてが良くないというわけではないです。本人もそれなりに頑張って作ろうとした形跡が見えるし。
たぶんわたしの期待値が高すぎたんでしょう。
ソニーミュージック、Sucmosといい宇多田ヒカルといい、色々高そうなお買い物してますね。
LPレコードも再生産始めるってニュースあったし。