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ほんとうは怖いceroの「MyLostCity」1

My Lost City


今年はぼくりりが「ノアズアーク」を出して大洪水で思い出したのが、ceroの「My Lost City」。

 

ceroの「MyLostCity」は、今まであまり歌詞は読まないでそのまま聴いてたのですが、このアルバムも、ぼくりりが「Noah's Ark」で描いたようなコンセプトとほぼ同じものを描いているのではないかと思います。


ただ、ぼくりりのの「ノアズアーク」の方がよりはっきり具体的に描写してる。そういう意味で大それたことをしている、ある意味問題作。


「マイロストシティー」は、夢をみてたんだ、ってことになってるから夢オチ、って言われたらそうかもしれない。

 

ただ、「マイロストシティー」はリアルとファンタジーの中間を突いてくることで、聞き手に問いかけて来るような構造になっているみたい。

そういう意味でceroはこのアルバムですごく実験的なことをしている気がします。


「マイロストシティー」と「ノアズアーク」の違いは、「マイロストシティー」には「ノアズアーク」のような宗教的な引用が一切ないことと、ceroが暮らしている東京の生活、身の回りのことに引き寄せた描写が多いこと、音楽、映画、文学(宮沢賢治)から引用が歌詞のあちこちに散りばめられているのが、違いでもあり特徴かなと思います。

 

 で、どちらかというと私は「マイロストシティー」の方が、より重層的なような気がしています。厚みがある。でも、たぶんぼくりりよりわかりにくい。


いちおう舞台が東京に限定されているだけで、大洪水が起こって、船が出てきたり、みんなの魂が消えてなくなってしまうのは同じです。だからノアの方舟のイメージは持ってると思います。全くそれを出さないけど。

 

曲も全編にわたってポップなダンスミュージックで、歌詞見てしまうとシリアスなところもあるのですが、歌い方も力が抜けてて全然暗くないんです。

ただちょっと怖いだけ。

このアルバム「My Lost City」がリリースされたのがいつなのかを確認したんだけど、2012年10月。

 

My Lost City

My Lost City

 


で、今年は小沢健二の「流動体について」だったりぼくりりの「Noah's Ark」だったり坂本龍一の「async」だったりが色々重なってるのが不思議だけど、

どうしてこれは2012年だったのかな、と考えてみたら、前年の2011年は東日本大震災が起こった年だったんです。

東北では津波被害もかなり大きなものがありました。今でも問題はおわっていません。

でも東京にいて今これを書くまでそれをすっかり忘れている自分がいました。


東京でも地震はあって結構揺れたけど、幸いceroが住んでるあたりは水の被害も液状化もありませんでした。


で、ceroは他の大物アーティストと違って、東北を応援しよう、という応援歌ではなく、これは何かの警鐘、っていう意味を込めて翌年にこのアルバムができたのではないかなと思っています。


ceroのこのアルバム「MyLostCity」をすっごく簡単にまとめちゃうと、


01.「水平線のバラード」はエピローグ。
てくてく歩いていたら(02.「マウンテンマウンテン」)、急に暗雲たちこめ、あっというまに東京は水に飲まれ(05.「大洪水時代」)、六畳一間が船になって、いつの間にか船上パーティー(06.「船上パーティー」)、切り裂き魔があの娘を狙う、ちょっと待った!!
行かないで光よ、わたしたちはここにいます・・・巻き戻しして(うみなりかきけす)(08.Contemporary Tokyo Cruise)
街と街の間を電車が走る、そんな暮らしがずっと続くと思っていた、だけどぼく、まちがっていた。(09.「roof」)
あの娘は助かったけど東京は荒野になった。魂はちりぢりに、かなしみは消えない(10.「さん!」)
・・・ほんの一年前までは眠っていたんだ、そんなあるはずないパラレルワールドの話(11.「わたしのすがた」)っていう構成。

 

曲はポップなダンスミュージックだし(ラップ風なのもある)、曲でも歌い方でも暗いところはなく、むしろ韻を踏みつつ(韻って、だじゃれともいえる)ユーモア交えて語ってる。
だから歌詞をじっくりみなければ、普通に聴いて楽しいポップなアルバムです。
ただ、その中に不穏な空気を混ぜてくるんです。

最後が「海が出て来る夢を見ていた」なので、洪水と思っていたのは夢オチ、って言われてしまうとそうなんですが、それだけで終われない「怖さ」が気になっていました。

ポップな中に潜む怖さ、って、ある意味ホラーより怖くないですか?

なので、ceroの「My Lost City」の歌詞もそれぞれちょっとちゃんと読んでみようと思っています。

歌詞みてると、あれ? ここってあの「サピエンス全史文明の構造と人類の幸福」で言われてることと同じ?って箇所があったりします。

 

 この本ですよ?

 

そういう意味でもめちゃくちゃ勘のいい人たちだと思う。ceroは。


ただ結構引用とか多いみたいで、ぼくりりより骨が折れそう。でも基本的にダンスミュージックぽい感じなので、ラップみたいに語数は多くないです。

それとぼくりりの「ノアズアーク」の時は「流動体」との関係も含めて書きたかったから長くなったけど、今回は「ノアズアーク」みたいに一曲ずつ解説、とかはしない予定。

ただ、このアルバム、曲どうしの縦のつながりもあるみたいだから、ちょっとどう書こうか悩んでます。

ぼくりりは読書・詩を読むのに近いから、読書感想文と思えば書きやすいけど、ceroは歌詞と音が渾然一体となってるから、それを文章にするっていうのがほんとにやりづらい。

 ぼちぼち書きますので少々お待ち下さい。

とりあえず、このアルバムの代表選手かな、とおもう曲を一曲どうぞ。

 

Contemporary Tokyo Cruise

Contemporary Tokyo Cruise

 

 

 

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