sumikaのSummerVacation(アルバムFamilia)を聴いています。(歌詞解説)
夏だから夏っぽい歌紹介しよう、ってことでsumikaのsummer vacationっていう曲が今年好きなのでこの曲を紹介します。
このアルバムに入っています。
sumika / Summer Vacation【MUSIC VIDEO】
オーディオテクニカの協賛で作られたビデオです。
女の子がつけてるのこれかな。
オーディオテクニカ Bluethoothヘッドホン シルバー ATH-CKR35BT SV
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音、歌詞、コーラス、声、全部が渾然一体になってて一つの世界が出来てる感じ。
ceroのsummer soulも夏、湿気のある感じっていうのがよく出てるので、夏の夕方に合うけど、それと似た雰囲気の音。
sumikaのsummer vacationも同じく夏の夕方から夜の時間で温度湿度のある曲なのですが、ceroのsummer soulにはない成分があります。
summer soulは、あの子を置いて一人きりハンドル握って出かけちゃうんですが(つまりちょっとひとりになりたい男の歌)
sumikaのsummer vacationは、音や情景描写の雰囲気は近いのですが、それに距離が限りなく近い片思い、という人間関係が加わっています。
だから、近いのにこれ以上近づけないみたいな、切ない成分がプラスされている感じ。
<心地いい熱さ残るアスファルト>とか<温いアイスティー>とか<灯る街灯が夜を始めた>とか
夏の夕方の、日が落ちて涼しくなりそうだけど、蓄熱したアスファルトのせいで、まだ暑さから解放されそうでされない、もわっとしたけだるい感じと
<熱帯びたのは君のせいだからさ>っていう歌詞に出て来る煮え切らない男女の関係が絶妙にリンクしています。
(あと、製氷した氷を転がすようなゴロゴロ?ガラガラ?って音とか聞こえるのもいいし、ギターがぽわん・ぽわん・ぽわんって聞こえるのもいい)
iPodに入れて夕方から夜にかけてちょっと外を歩いた時に、これ聴いてみたのですが、夏の夕方の涼しくなりそうでならない空気感と、温度と湿度と、聞こえて来る声と音が合わさって、妙にもうね、なんともいえない気分になります。
特に今の季節に、日が落ちたけどまだ暑いな、って時に外で聴くのがおすすめ。
(花火大会的な楽しみ方)
何かの感情を呼び起こすような歌・声って最近探さないとなかなかないような気がします。
(コーネリアス聴いてそうなった時はびっくりしたけど)
ライブ映像のちょっとだしなんですけど
sumika ライブ【SWEET LOVE SHOWER 2017】
心地良いはずさ
最初はこう言ってるんですけどだんだんこうなっちゃう。
狂おしいはずさ
君は言ったんだ
付き合ったらさ
「楽しいかもね」
これぞ小悪魔系女子に振り回されるの図。
(<君は言ったんだ 付き合ったらさ 「楽しいかもね」 >のところ、ちょっと高いところにのって、お客さんに向かって歌ってます。)
曲の冒頭に女の子の声で「さまーばけーしょん」って入ってるのですが、最初、これ、いるかな?って思ってたのですが、これが小悪魔感を増してるのかも。
この(歌う人)声もいいし、歌う人が歌詞を書いてるのですが、歌詞だけじゃなくて、歌い方にも、感情をのせてます。
例えばこの辺なんですけど
温いアイスティー
飲めば帰るだろ
僕は飲めなかった
喫茶店かどこかにいて、注文したアイスティーがもう温くなってるんだけど、飲んだら相手が帰っちゃいそうで、飲めなかった、っていう場面かなと思うんですが、
まず、歌詞でいうと、<飲めば帰るだろ>ってちょっと苛立ちが入ってると思うんです。
だって、相手は、付き合ったら「楽しいかもね」って言っておいて、お茶したらすぐ帰っちゃいそうな雰囲気醸し出してて、主人公はそれを察してる。だから<狂おしいはずさ>ってなる。
<温いアイスティー>は裏声で、その後の<飲めば帰るだろ>でちょっといらっとしても、次の<僕は飲めなかった>でちょっと弱気になる。
なぜかというと
会いたい気持ちは
昼の陽溜まりに
落として忘れて
ほら、また愛しい
< 愛しい>はかなしい、って読ませてます。
会いたいんだけど、会いたいときに会えない、けど「僕」は会いたい。
会いたい気持ちは
昼の陽溜まりに
置き忘れたフリして
ほら、また寂しいだけだ
だから、友だちの振りしてるけど、その関係を壊したくないからそういうことは言えない感じ。
今会ってる時間が終わったら、また会いたくても会えない時間が待ってる。
それがまた寂しさを増長させちゃう。
っていうのをリリカルに表現してる。
<ほら、また寂しいだけだ>って言ってるので、それ繰り返してるみたいです。
この辺りの歌詞や歌い方に、行き場のない、やり場のない気持ち、それに、ほんのちょっとの苛立ちっていうのがプラスされて、ことばに音とコーラスが絡み合ってやるせない感じになります。
それを夏の夕方に温い気温と湿気とアスファルトにこもった熱を感じながら聴いた時この曲の良さがすごくわかりました。
コーラスもバンドメンバーでやってるのですが、すごいハモりです。このハモりの気持ち良さも他ではなかなか聴けないと思う。
音と歌詞と声とが渾然一体となってこの世界観を作っていて、聴いててこの世界にしばらく浸っていたくなってしまうので、この歌の主人公もこの「温さ」から抜けられないんだろうなっていうのがよくわかる曲です。
(そういう意味でMondoGrosso(満島ひかり)の「ラビリンス」みたいでもある)
ことばの印象で言うと、最初の<温いアイスティー>っていう飲み物の温度が、最後の<温い感じの温度で僕らは>っていう人間関係の温度に掛かっているので、通して聴くと、この「温い」ってことばの持つ印象で曲全体が包まれる感じになります。
曲がceroっぽいって書いたけど、こういう曲調はこのバンドとしては珍しいみたい。わたしはむしろこういう感じが好きなので、今後sumikaの歌でこの路線の曲をもっと聴いてみたいです。
この曲の場面は、夜だけど、アルバムは全体的には割と朝っていう感じの曲が多いかも。
爽やかロックな感じ、ファンクな感じ、ポップな感じ、星野源の『恋』的なキラキラしした音、バラード・・・ってかなり色々なフレーバーが詰まっているアルバムです。
聴く人によって、好きな曲が違いそうだけど、それぞれ気に入る曲がありそうな感じ。
【2017/7/12発売】sumika /「Familia」全曲試聴 Trailer
あと、単純に皆さん楽しそう。
折をみて他の曲も解説するかも。