cornelius(コーネリアス)Mellow Wavesは歌詞を聴け。1-(2)cero「街の報せ」共通点と違い
コーネリアスの「Mellow Waves」は、トラック01「あなたがいるなら」から03「未来の人へ」までが一つのテーマを扱っている、それがceroの「街の報せ」と被るみたいだから、どこが似ていて、どこが違うのかを書きます、という記事の後半です。
(管理画面が重すぎて書けなくなってしまったので記事を分けさせてもらいました。)
今回は03から。
前の記事はこちら
聴こう。
03.未来の人へ
だけどこれは未来の世界の話。
そして、音楽の可能性がテーマとしてあるのかなと思います。
この曲はceroの「街の報せ」の中の「街の報せ」とちょっとテーマが似てるかもと思いました。(「街の報せ」は3曲入りなので・・・)
まずコーネリアスの方から順番に説明します。
その部屋には 私はいない
紙の上の 文字があるだけ
この部屋には私(小山田圭吾)はいない
「紙の上の文字」は楽譜のことを言っているのかな
コーネリアスが「私」っていう主語使うのも意外性ありました。
この曲の言葉遣いが全体的に、男でも女でもない感じがします。
見つけたなら ここからそこへ
何回でも 行けるでしょう
楽譜をみつけたら、ここ(未来)からそこ(2017年)に何回でも行ける、と言っています。
変わってるのが、「ここ」がいまではなくて未来、「そこ」が現在、という時間の扱い方。かなり変則的です。
音ではなくむしろ歌詞にこういうギミックを入れるのがこのアルバムの特徴みたいなんです。
後半の曲の歌詞にも似たような技巧が使われています。
その部屋には 私はいない
傷だらけの 盤があるだけ
自分がいなくなっても、このレコードに針を落とせば何回でも会えるよ、って未来の人に語りかけてる。
コーネリアスが過去の音楽を聴いて、弾いてきたのもそういうこと、と言ってるようにもきこえる。音楽を通して人は時空を超えることができるよ、と。
だから、「あなたがいるなら」と「いつか/どこか」はアナログだけだったのか、とここで理解する。
このジャケットデザインは、小山田の親戚の叔父さんの手によるもの。
Mellow Wavesも。
だから、この2曲はコーネリアス的にもかなり気合いが入っているはずです。
ここ03「未来の人」でこういう歌詞入れたら、アナログ盤は、時間が経っても針を落として聴いてもらえる価値があるものにしないといけなくなっちゃうじゃないですか。
ある意味この2曲(「あなたがいるなら」と「いつか/どこか」)はコーネリアスがそういう覚悟で作った曲、っていうことだと思います。
なので、アルバムの中でも「あなたがいるなら」と「いつか/どこか」は別格、とも言えます。
気まぐれでも 針をおとせば
何回でも 会えるでしょう
この歌詞とか中性的ですよね。
この、02.「いつか/どこか」で、「全員、みんな、(死んじゃうんだから)ね、」
からの、03.「未来の人へ」で「針を落とせば何回でも会える」へのつながりが良いなと思います。
ceroの「街の報せ」もこういう歌詞があります。
みんなも歳をとり いつかはいなくなるけど
また誰かがやってきて 音楽をかけてくれる/街の報せ
ceroの場合も、音楽を通して縦の時間軸でも人はつながっていく、っていう意味はコーネリアスの「未来の人」と同じ。
だけど、音楽の扱いが違う。
ceroは「音楽をかけてくれる」、つまりceroは自分自身の音楽を、この曲のなかで「one of them」にしている。
でもコーネリアスの場合は「音楽」を「自分の盤(レコード)」に限定している。
だから余計「コーネリアス」という存在が浮き出るし、その分孤独感が強まっている感じがします。
誰にも知られない愛しい 1人の夜があるよ/街の報せ
ceroのここの歌詞は、孤独を愛しつつ、それは人に囲まれているからこそ一人になりたい、っていう意味での孤独だと思うんです。
ceroの方がひとりじゃない感じ。
(この曲、ラストの歌詞が、愛しているよ、だし、タバコはほどほどに、に変わってるし)
ceroの「街の報せ」のなかに「よきせぬ」って曲が入ってるんですが、それとここの歌詞が似ています。
今日出来た 曲を奏でてさりげなく 友達が歌いだす/Cornelius・未来の人
よきせぬ曲が流れだし 友だちが皆 踊りだす
音楽とともにある喜びにフとハイになる/cero・よきせぬ
だから、どちらの歌詞にも、ともだちが出て来る。
友達と、音楽とともにある喜びを歌にしている。
なのに、この曲(未来の人)から感じるのは孤独感です。
ceroの曲の方が、生きる喜びにあふれてる感じがする。
コーネリアスの醸し出すこの孤独感は何なのか。
次の曲がインスト曲で、このアルバムは一回ここでテーマが完結して、ストーリー性が切れると思います。
で、04を挟んで05から次のストーリーが始まる。
01から03までで、「音楽」「感情」「死」「無」っていう大きな根源的なテーマを扱っていて、
このアルバム「Mellow Waves」は前半に比べて後半がこぢんまりしてる、と思う人もいるかもしれません。
で、05以降が、コーネリアス(小山田圭吾)の心象風景、ある意味音楽を使った私小説ではないかなと思っています。
それを次から聴いていきましょう。