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ぼくのりりっくのぼうよみ歌詞から見るデビュー前後の心境の変化3「つきとさなぎ」を聴く

SKY's the limit/つきとさなぎ

前回、「Black Bird」はぼくのりりっくのぼうよみが動画投稿して自分を発散してたところから、レコード会社の目にとまって、メジャーデビューが決まって、その時の心境を描いた曲、って解釈しました。


わたしはぼくりりを追っかけてるわけではないので、ぼくりりの人物について詳しいわけではありません。
あくまで歌を聴いたり歌詞を読んだ上でこうじゃないか、っていうことを書くだけです。あ、インタビューとか対談は多少読んでます。

今回は「つきとさなぎ」の方。

で、1回目に書いた通り、予定してた順番を変更しているので、多少書き直し切れていないところがあるかもしれません。

 

 ぼくのりりっくのぼうよみ「つきとさなぎ」の歌詞を聴く

 「つきとさなぎ」の曲は、どことなく哀愁を感じさせる笛の音が印象的です。あまり聴いたことないけどちょっともの哀しいけどどこか懐かしいような雰囲気です。


バックにこの笛のメロディーがちょっとだけ音階を変えながらリピートされててちょっと癖になる。

なんかちょっと涼しそうな感じもします。


歌い方は、「ノアズアーク」に比べるとやさしい感じですが、「Black Bird」の方がもっとやさしく柔らかいですね。

今回はちょっと寂しそうな感じ。

 


諦めたはずなのに いつも捨てられないのは

残酷な可能性が ぼくを放さないから やめてよ

早くからデビューできて世間でそこそこ認知されているぼくのりりっくのぼうよみがこういうこと言うのって、ちょっと傲慢な感じもしなくもないです。
ここは、「サイタマノラッパー」っていう深夜ドラマのタイアップとして書き下ろしたそうなので、ドラマの主人公目線ではないかなと思います。


「サイタマノラッパー」は、主人公が成功するんじゃなくてラッパーになるのを諦める話みたいです。
表現の世界でやっていきたいと思って頑張ってきたけど芽がでなくて、やっぱ無理なのかなって諦めないといけない時期にきて、それを受け入れるっていう話。(たぶん。みてなかったからまちがってたらごめんなさい)

「残酷な可能性」っていうのは、可能性が少しでもある、っていうのはかえって残酷なことだ、と言っている。

ただ、ぼくりりはもっとみんなに表現をしてほしい、って思ってるみたいで、それを結構発言している。


それでいて可能性があることは残酷だって言ってしまう、そういう意味では酷なこと言ってるな、とも思います。

 

ここは「やめてよ」っていうところが白眉だと思います。
こういう表現はぼくりりからしか出て来ない気がする。

 (・・・って思ってたら、ほんとにやめてほしいことされてた、っていう)

  


知らないまんまでいられたら どれだけ幸せだったろう

この部分は視点が変わって、ぼくのりりっくのぼうよみ自身のことを歌っていそう。
「知らないまんまでいられたらどれだけ幸せだったろう」っていう歌詞は
後で出て来る「足跡も残らないような人生」はいやだ、つまり普通の人になりたくない。

でもアーティストになったらなったで「知らないまんまでいられたらどれだけ幸せだったろう」なんて言う。

「知らない方が幸せ」って言って、普通の人になるのもいやだって、だったらどうなれば満足なの?ってちょっと思ってました。

 でも、これも、<やめてよ>も、ちょっと別な意味もあるみたいだな、って最近気がつきました。

それが1回目に書いたこと。

 

そういう事情ってわからないし、メジャーデビューして世間でそれなりに認知されてる人がこういうことを言ってるのを、ずっと地道に頑張って芽が出ない人が聴いたら「何いっとんじゃボケ」くらい思うと思うんじゃないでしょうか。


そこで「いつか枯れる泉を一人汲み続ける laugh me now」って入れてくるんですが、「泉」はインスピレーション。いつか枯れる泉を一人で汲み続けてる自分、嗤ってよ、って自虐して一つクッションを置いている感じがします。

 


選択肢は幾通りも でも この世界 reboot不能

今年「ノアズアーク」で描いた世界と矛盾したことを言っていますよね。
「after that」って世界まで描いちゃったけど、自分自身ではそれに確信が持ててないようです。


こういうところが小沢健二やYONCEがそういう世界を信じてるのに対して、ぼくりりがちょっとふらふらしてるなって思うところ。

(でも最近ヨンスが揺らぎ成分を見せてるという)

 


この一歩踏み出した先は崖?

飛べない翅みたいだね ただ笑える

ここもぼくりりの現在の心境かなと思います。
ノアズアークの中にも「幸福は転落を想起」って歌詞がありました。
Liarかな
ぼくりりには自分の行く先がよく見えていないようです。


だからデビューしたことである意味さなぎから羽化した立場にいるんだけど、
羽化しただけで殻にくっついたままで飛べない羽みたいって言っている。
一歩踏み出した先は崖なんじゃないかって怖がっているみたいです。

 


足跡も残らないような人生
垂れ流す枯れ果てた inspiration
(中略) ここには僕の居場所は無い

ここの歌詞はどう読むかちょっと迷ったんですけど、ぼくりりの未来に対する不安と現在の心境かなと読みました。


「垂れ流す枯れ果てた inspiration」は「足跡も残らないような人生」と対になっていて、ぼくのりりっくのぼうよみは、自分は将来このどちらかになるんじゃないか、って危惧している。


「垂れ流す枯れ果てた inspiration」は「いつか枯れる泉を一人汲み続ける」がさらに進行した状態です。


自分には他を圧倒するような才能はなかったんだ、曲ができたのはただの初期衝動だったんだって思った瞬間、心が死にそうになる。
(「褪せた初期衝動」はLiarに出てきます)

「ここには僕の居場所は無い」「ここ」は「ちきゅう」って歌ってるんですけど
まず、音楽業界に自分の居場所がないように感じているのではないかなという気がします。

 

自分の立ち位置に関する不安感


音楽やってる人って楽器が弾けるのが前提で、歌う人は楽器が弾けなくても作曲はパソコン使ってでもできたりすると思うんですが、ぼくりりはそれが一つもできないらしいんですね。

他人に作ってもらったバックトラックにラップで言葉やメロディーをのせて行く、っていうスタイル。

他にこういうことをやってる人がいなくて、そこがぼくりりのオリジナリティでもあるし、音楽やる上である意味とても自由度が高い、とも言えるんですけど、本人はそのスタイルにいまひとつ自信が持てていないのかな、っていうのが伝わってきます。

 

羽化したのに殻にくっついたままで飛べない、ってどういうことかな?って考えたんですけど、
トラックメーカーさんがいないと、ぼくりりは自分一人では曲が作れない。そのことを殻にくっついたままで飛べない、と言っているのかもしれないです。

 

無意識にマジョリティでいたい、また、周りの目が気になるぼくりりにとっては、それはちょっと居心地の悪いことなのかもしれません。

特に楽器が弾ける人たちに囲まれてしまうと余計にね。


じゃあ音楽やめたらどうなるかって考えると「足跡も残らないような人生」。
それもいやなんですね。
そこから「心が死ぬ」「地球には僕の居場所がない」って発想になるのがまた極端だな、って思っていました。

 


とうに枯れた泉を 一人汲み続ける

うーん、「いつか枯れる泉」だったのが「とうに枯れた泉」に進行しています。
「いつか枯れる泉を一人汲み続ける」がステージ1だったら「とうに枯れた泉を一人汲み続ける」はステージ3くらい。


で、「枯れ果てたinspirationを垂れ流す」のはステージ4くらい。
今ステージ3で、近いうちステージ4に進行するんじゃないか、って不安がっている感じです。
このフレーズは2回出てきます。

 

知らない振りで誤魔化しても

心は泣いてるんだよ

ここの歌詞ははまわりの大人に訴えてるようにも見えます。ここだけ見たら結構辛そうなんですよね。

 

ただ、トラックメーカーさんが作ってくれた曲に歌詞をのっける、っていうのは、ゼロから作るのと違って、割と作りやすい気もするんですよね、インスピレーションがなくても、作れちゃう。
「一人汲み続ける」って言っても、トラックメーカーさんが「スカイズザリミット」みたいな明るい曲作ってくれたら明るい歌詞も書きやすいし、曲にインスピレーションもらえて実際書けてる。


明るい中にちょっとだけ影がある歌っていいと思うんですけどね。
声も、声量あるわけじゃないとけど、「ノアズアーク」聴いたら結構表現力もあるみたい。歌い上げるタイプの歌手でもないし。

 

で、こういう歌詞出してきたのをみて、周りの大人はどう思うんだろう、何にも思わないの?って思っちゃうんです。例えばマネージャーさんとか。

 

なんかこの歌詞よく見て、状況みてたら、ぼくのりりっくのぼうよみってちょっと怖い人に嫌がらせされてるかも、それが職場の同僚みたいな人、そういうことに対して、悲しい、抗議、っていう意味もこの曲にはあるかもなって感じた、ってことを以前書きました。

 

piria.hatenablog.com

 

次は「blackbird」と「つきとさなぎ」の比較をしつつ少し書き足りないことを補足する話になるかもしれません。

 

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