コーネリアスMellowWavesは歌詞を聴け。2-(2)夢の中で深層心理検索中/夏うたプレイリスト
今週のお題「私の『夏うた』」
コーネリアスのMellow Wavesについて書いている記事。なんだか連載みたいになってきた。
歌詞を聴け。っていっても別に歌詞みなくて音だけ聞いてても楽しいですよ、このアルバム。この記事も歌詞の話しかしないわけでもないですし。
でも、アルバム後半は、歌詞みるとコーネリアス小山田圭吾の頭の中、心の中が覗けますよ、という内容です。
ここからがいよいよ「メロウ」なんです。
前半は、すごく普遍的なこと、「全員!みんな!(いつか/どこか)」だから、誰にでもあてはまるし、わかりやすくもできている。
でも後半は、そうもいかない。
後半は「解る人にだけ解る」っていう宮藤官九郎的な要素(ジャンルが違うだろ)が散りばめられてるから、解らない人には、このアルバム、前半良かったのに後半いまいち、って感想になりそう。
なのでそういう人の隙間を埋めたいな、って思って書いています。
この記事は05.「夢の中で」からスタート。
ただし、長いのでお時間ある時どうぞ。
05.夢の中で
ここからMellow Wavesの第2章がスタートします。
歌ものです。この曲もかなり好き。
聴こう
歌詞はラップ的に韻を踏みながら、歌い方はポップで、昔よりしっとりしてる。
サウンドは浮遊感ありつつもダンスミュージック風。
全くブラックな匂いがしないのに、聴いてるとなぜか横に揺れたくなる、気持ちいいテンポ。
なんちゃってブラックミュージックより、電子音響使ったこの曲の方が横揺れ感があるのって、音が右から左から聴こえるせいで、自然と頭が揺れるからじゃないかなって気がします。
リスナーを横揺れさせたい人はこの方法を研究してみてもいいんじゃないでしょうか。
そういう意味でコーネリアス的にも面白い曲。
この曲だけ無限ループしてもいいくらい好きです。
夢とうつつの間を行き来している感覚を歌にしているんだけど
その中にさりげなく今の世界の迷走状態を折り込んできている。
けど、最終的にコーネリアス、というより小山田圭吾は外の世界のことより今、内面世界を探っているんだな、ということがわかる曲です。
タイトルは「夢の中で」なんだけど、ここでは車の運転をしているんです、ぼんやりしながら。(小山田圭吾45歳にして免許取ったらしい)
危ないな。
ceroの「Narcolepsy Driver」みたいだ。(ガム噛めよ)
最初、天気の話で始まるところもceroっぽいんですよね。(歌詞が)
淡々 窓の外 点々 雨の粒
段々 近づいて ぽつり 弾け散った
窓の中(車の中)にいること、急に雨が降り出してることがわかります。
「たんたん」「てんてん」「だんだん」とかが気持ちいい。
この気持ち良さは小山田の歌い方がやさしくなったせいもあるかな。
多分、季節は夏かなって思います。後半に「外気温は上昇中」って出て来るのと、
ceroの
Summer Soul でも、<babyあの子を置いて一人きりハンドル握って出掛ければ><夕方からは雨の予報><降り出したのは天気雨>っていうとおり、東京の夏の夕方の天気は変わりやすい。
心拍数は 上昇中 現実感覚 減少中
天体運行 影響中 現実感覚 減少中
深呼吸で 調整中
「心拍数は 上昇中」「現実感覚 減少中」は「上昇中」「減少中」と対比になっています。
「現実感覚 減少中」っていうのが、家の中にいることが多かったり外にいてもスマホいじってたりであんまり自然に触れたりしなくなってる感じ、っていうちょっと抽象的な話をして、
「深呼吸で 調整中」っていう、車の運転をしている現実に戻る。
「深呼吸で 調整」するのは、「心拍数は 上昇」しているから。
(なんで心拍数が上昇するのか書かれてないけど、01.の「あなたがいるなら」で、どきどきしてるから、もしかしたら、ここの「心拍数は上昇中」の歌詞と「あなたがいるなら」の「どきどき」は係わってるのかもしれない。)
深々 夜の空 点々 星の粒
瞬間 輝いて キラリ 消えていった
ここの歌詞では、車の運転をしていることが夜であること、星が見えて、宇宙に思いを馳せていることがわかります。
大宇宙で 進行中 彗星段々 接近中
信号点々 点滅中 交差点で 錯綜中
世界中で 迷走中
「大宇宙で 進行中」では宇宙で何か大きなことが起こっているみたいだ、ということ、車が進んでいることをかけていて、
「信号点々 点滅中」「交差点で 錯綜中」で、ここでは車の運転をしている現実に戻ってる。
「交差点で 錯綜中」から「世界中で 迷走中」と、また、車の運転をしている現実から、世の中が混乱している、という大きな話に戻っている。
ゆめから さめないで
ゆめみて 眠って
心象風景 周遊中 深層心理 検索中
車の運転をしているのに、夢をみてるみたいに現実感がない、夢をみたまま眠ったまま生きている、そんな感じに、どうしてこうなっちゃったんだろう、と自分の心象風景(思い出)だったり深層心理を探ってみたくなったりする。
今度は内面に向かっています。
喧騒 街の中 運転 窓の外
近づいて ぼんやり 流れてった
街の中は喧噪にあふれてる、でも運転して窓の中から眺めていたら、街の喧噪もそれはあまり現実感がなくて、車で走っていたらいつのまにかその喧噪も窓の外に流れて行った。
「街の中」「窓の外」と対比。
外気温は 上昇中 野生生物 減少中
異常現象 発現中 日本中で 混乱中
窓の外に目をやったら、今、外は暑いんだろうな、っていうところから、地球温暖化だったり、異常気象だったり、今こんな動物が絶滅危惧種になって、という色々な異常なことが起こっている、という世界のことだったり日本の混乱のことだったりに思いが行っている。
心象風景 周遊中 深層心理 検索中
ここでまたさっき歌詞と同じ、内面思索に戻っています。
最後はこのフレーズの繰り返し。
なので、世界のことに思いを馳せながら、最終的には、コーネリアス(小山田圭吾)が内面世界に没入していることがわかります。
この「深層心理検索中」って歌詞なんですが 、深層心理っていうのは心の中、つまり頭の中、それをPCのハードディスクみたいなデジタルなものとして考えてる。
確かに人間の脳にはハードディスクみたいな記憶領域と、ワーキングメモリーっていう短期的記憶処理をする領域があって、PCのハードディスクとメモリの関係と似ています。
そんな感じで深層心理をデータベース検索するみたいにデジタルな感じで探った結果、「あなたがいるなら」っていう人間の情念みたいな歌ができた、っていうのが面白いなと思うんです。
「しんそうしんりけんさくちゅう」は、この曲の中でも耳に残るフレーズなのですが、
人間の脳をデジタルな感じに扱ったの歌詞なのに、歌い方が柔らかいので、冷たい感じは全くしなくて、むしろやさしい感じに聴こえます。(私にはしんそうしんりたんさくちゅう、って聴こえるんだけど)
そういう意味で、歌では、どんなことばを使うかより、歌い方のほうが、聴いた時に与える印象を左右しているのではないか、と感じる。
この曲は単語レベルでかなり韻を踏んでいるのですが、押韻でリズムを取るっていうラップっぽいこともコーネリアスやったことなかったよね。
横揺れ感があるのも、ブラックミュージックを電子音響使ってポップに表現してるのも、これは狙ってるのかどうかわからないけど、このアルバムの特徴のひとつなのかな、って思います。
他には「Herix / Spiral」とかそうですね。
「あなたがいるなら」もコーネリアス的R&Bっていってもいいと思う。
この曲だけ、かなり感情をのせて歌っているし。
「夢の中へ」っていわれると星野源の「夢の外へ」思い出しちゃうんですけど、
(あの、日焼け止めのCMのっ)
コーネリアス・小山田圭吾はフリッパーズ時代から曲のタイトルに色んなアーティスト名・曲名の引用してるんですよね。
これがダンスミュージックっぽいからなんかタイトルここから引用した可能性もなくはないかなってちょっと思ってしまった。
でも井上陽水って手もある。
探し物はなんですか、みつけにくいものですか。
まだまだ探す気ですか、それより僕と踊りませんか フフッフー
こっちかな。
コーネリアスの若い頃の昔の歌ものポップ
なんかに比べて深みが増した感じ。
最近曲や歌い方をラップ風、R&B風にするJPOPアーティストが増えたな、と思います。一種の流行なのかな。
で、バックトラックは電子音で。聴いても残らなくて、書こうかな、っていう気にもあまりならなくて、そういうのちょっと食傷気味だったんです。
でも、これは音聴いたら完全にコーネリアスなんですが、よく考えたらラップ風なことやってる、っていう感じが新鮮。
あ、でもこれ好きです。超好きです。夜聴きたくなる。これは特別。
ceroのsummer soulとテーマもテンポもシチュエーションも似てるけど、リコーダーみたいな笛の音がクセになる。
世界観も好きです。
<きっとそれぞれが主人公でこの奇妙なそれでいて素敵な人生ゲーム>
<不安を抱くほど自由なこの世界で今から何しよう>
で、実際こっちの方が涼しそうなんです。
これ聴くと体感温度を2℃下げてくれます。
で、 おなじみの(?)ceroのsummer soul(Obscure Ride )
ceroの方が、湿気が多い蒸し蒸しした感じです。cool down babyって言ってるけど、暑い。
歌詞でも雨降ってくるしね。
これもイントロ、サビ、間奏に笛の音入ってる。フルートかな。
これもMy定番。
おこのみで。
ラップ風、で思い出したのがぼくのりりっくのぼうよみ、で、歌詞の表現だけなら、ぼくりりの方が詩的な表現する時がないわけではないけど
コーネリアスのすごいところは、若い時は軽かったけど、年取ってから凄みを見せたところ。
ここまでだとまだその凄み、までは感じられないと思うので、次回また続きをどうぞ。
長文お疲れさまでした。