ぼくりりのアルバム「ノアズアーク」の歌詞の意味[Liar]編2
ぼくりりのアルバム「ノアズアーク」の歌詞の意味[Liar]編の続きです。
この曲は、この世の中を、ぼくりりが観察してレポートにしている、ようでいて、Liarっていうタイトルがぼくりり自身のことになっている
能天気を演じてるぼくりりですが、実際にはなんだか不安を抱えているようだし、矛盾したことも言ってる、そんなことが見えてくる後半部分です。
試聴を貼っておきます。
勘ぐりは勘ぐりを産んで
気付けば視界は霧で覆われた
ここは疑いは疑いを呼ぶこと、
世の中を疑いの目で見ると疑心暗鬼の悪循環に陥るということを書いています。
指針なしでただ進むだけ
ここの部分の歌詞はたぶんぼくりり自身のこと。
この先どこへ行くか先が見えないけど、自分を取り巻く環境は動いて行く。
ここの辺りの歌詞はだいぶ直接的な表現です。
自分がないから他人が怖くなる
他人の中卑屈な自分の影投影
自己啓発本みたいで、特に捻ったところもないです。
影投影で、文字で見た時韻を踏んでるように見える。
恐れは全部自分に起因する
己の弱さから逃げてまた疑う
ここまで歌詞を読んできましたが、おそらくぼくりりに自分と呼べるものはまだないのでしょうね。
だからここも少し自分のこと入ってると思います。
ぼくりりみたいな人はSuchmosみたいな人たちに憧れがある気がする。
褪せた初期衝動
しがみつきモード
ここちょっとふざけて歌ってる。
だからこそぼくりり自身のことじゃないか、と思ったの。
しがみつきモード、って会社辞めたくても辞められない大人たちのことかなと思ったんだけど、
初期衝動って音楽用語(というか、音楽に限らず何か表現したい人が何とか世に出たい、っていう衝動のことみたい)
初期衝動で歌を作れた時期が終わってしまって、ちょっとしがみつきモードになってるって。
大人たちの耳に痛いこといいまくってるようで、それがぼくりり自身にもあてはまっちゃってるのが面白い。
とっくのとうに本意は移り変わり
偽物に成り下がる行動
なので、ここも、「心にもない作り笑い」とか「こういう人、こういう大人いるよね」って意味でもあるけど、
メディアに出て心にもない作り笑いをしてる自分がいたり、
過去に自分が作った曲に共感してくれる人がいるけど、自分の本心はもう変わっていて
本音と違うことをしゃべっていたり
そんな行動はもう偽物だよね、って言っているようにも見える。
下はちょっと謎な箇所。でもぼくりりの心情と思えばわかる。
また全部諦めて仕舞えば楽なんだ
浅はかに企んだ何もかも投げ出した
これも楽な方に進みたがる人間の習性、って言いたいところだけど、多分ぼくりり自身のこと。
ぼくりりには何か本当に伝えたいことがあったけど、結局それは諦めてやめちゃった。
「〜れば楽なのかな」っていうのは「Be Noble」にも出てきた。「Black Bird」でも「でもそんなのめんどいしなあ」と歌詞にあるので、ぼくりりは努力するより楽したいタイプに思えます。
愚かな企てはくたばった
言葉も色褪せる 決して伝わらない想い
心から出てきたものじゃない言葉には力がない、本音を言わない自分の想いは決して伝わらない。
そう思ってるようです。
だから「Be Noble」で「僕はやるぞ」って決意表明したのに、ここでちょっと腰砕けになってることがなんとなくわかる。
それに「Newspeak」では「音は濁るけど言葉は褪せない」って言ってたのに、ここは「言葉も色褪せる」に変わってる。同じアルバムの中で矛盾したことを言ってるわけです。
「Newspeak」は2016年のEP「ディストピア」で初出だから、作った時期はこの曲よりちょっと前なんだと思う。
「Newspeak」を書いたときはぼくりりにもちょっと崇高な理念があったのかもしれないけど、この曲を作った時点ではその時と気持ちが変わってしまっている。
その結果「とっくのとうに本意は移り変わり偽物に成り下がる行動」なのかなと。
だから「情報の濁流にのまれている人々の様子を描いた」っていう公式発言は
ぼくりりの本心やこのアルバムで本来伝えたいと思っていたこととちょっと違うかなって思ってるんですよね。
投げ出したっていうと「sub/objective」でも、ぼくりりは何もかも投げ出してまた拾い集めて泣いてる。
だから、ここで投げ出したもの、今じゃなくていいから、ちゃんと全部拾い集めてくれよ、
泣いてもいいから、って思っています。
歌詞には入ってないですが、
う そ つ き だ あ れ う そ つ き だ あ れ
が繰り返しサンプリングで入ってます。
だから、「嘘をついてるのは誰だ?」って疑心暗鬼になっている人々の姿を俯瞰した目で見てるぼくりりに対して、
本心じゃないことをしゃべったり作り笑いしているぼくりりに、
それを見ているメタぼくりりが「ほんとの嘘つき誰だよ(お前だよ)」って声をかけているようにも聴こえる。
最初音ががちゃがちゃしてるのが気になってよく聴こえなかったけど、よく見るとその辺の揺らぎが聞こえてくる、っていう曲。
その辺わからない子供たちは「こういう大人だせえ」って思って聴いてるかもしれないし、それでもいいと思う。
でもそのきみが聴いてるぼくりり自身、こういう面があるからね、っていうことは言っておくね。
本題に戻ります。
ぼくりりは、「Noiseful World」と「Liar」
この2曲で現状選びうる二つの選択肢を提示しました。
つまり
- 選択肢その1「ぼんやりとして感覚を麻痺させることで幸せと感じて過ごす」(Noiseful World)か
- 選択肢その2「現実を直視しうつになって過ごす」(Liar)か
では、本当にこのどちらかの選択肢しかないのでしょうか。
あけましておめでとうございます
虚ろな誇大妄想を紹介しよう
たぶんこれがぼくりり的に今言える最大限の本心。
それをあけましておめでとうございます、とか虚ろな誇大妄想、ってふざけてちょっとごまかして言ってる感じかな。
というわけで次の曲「Noah’s Ark」で提示されるのが第三の選択肢です。