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続ぼくりりのアルバムの歌詞の意味[Newspeak]後編

Noah's Ark

ぼくりりのアルバムの歌詞の意味[Newspeak]編 続きです。

 難しい言葉が多いのでそれを解説するのと

この曲には、ぼくりりの二面性が出ているところがあるので、それを解説していきます。

Newspeak

Newspeak

 ここから英単語多めで面倒ですが、この辺りが多分一番強調したいのでは。

よりシンプルになった世界
曖昧さの排除は相対して害為す
(中略)

犠牲にしたdiversity
ひとつが全部の代替に

 

曖昧さの排除(二元論)は有害である、なぜならダイバーシティ(多様性)を犠牲にするから。
一つの価値観が全てを覆ってしまうこと(全体主義)への問題意識。

 

 

simplificationは先天性innovation

でも、物事を単純化して捉えようとするのは、複雑で雑多な情報に優先順位をつけ抽象化することで物事を理解しやすくするというる、脳に先天的に備わった性質でもある。

あるいは、google一強によって整理されたインターネットの世界かな。

 

マイナスにも快楽にもなり得るbogus affair

「bogus affair」って何だと思ってgoogle先生に訊いてみたら「偽不倫」と教えてくれましたが、これじゃ変なので辞書ひいてみた。
直訳するなら「偽の事件」または「事実かどうかわからない個人的な心配事」という感じ。
「傍観するaudience」と絡めるなら、嘘か本当かわからないゴシップ記事、みたいなものでしょうか。

嘘か本当かわからないゴシップ記事とそれに群がる人びとを指して、
それって一瞬の快楽にはなるかもしれないけど、結局どうでもいいことに時間使ってるね、みたいな。
せっかく調べちゃったから書く。
でもぼくりりもゴシップ好きそうだよね。

後者なら、自分が思ってる心配事って、本当に存在してるのかな?
自分が心配事を作り出してるだけじゃない?っていう意味になります。

もっと突っ込んだことを言えば、
よりシンプルになった世界は、
一言で表すならグローバリゼーションの台頭と、
それによって人間らしさや、人と人とのつながりが失われてゆく状態を表しているのではないかと思っています。

ぼくりりがそこまでかんがえてるかは知らない。
(多分そこまでは考えてなさそう、発言みてると)

そしてキーワードとなるのがこのフレーズなのですが

 
クオリアを取り戻せ 

ぼくりりくんがよく使う「クオリア
クオリアといえば茂木健一郎

クオリアというのは「感覚質」と訳されますが、ぼくりりは自由意志っていう意味で使ってるらしい。
クオリアを自由意志というのはちょっとわからないけど、
いずれにしても「クオリア」は人間らしさを象徴する言葉として使われているのでしょう。
これ個人的にしっくりこないのでもうちょっと違う言葉探して欲しい。

Bring it again and it's time to become real 

 対訳
もう一度ゾンビから「人間」を取り戻せ、今それが現実になる時

 

それから繰り返されているフレーズが

So many words 

とそれに続くフレーズたち

乾いた言葉を並べて意味を求めて彷徨い歩く
(中略)
空っぽになって何もないよ遠の昔に枯れ果てたcitation
(中略)
息絶えた言葉に縋って自分を探して彷徨い歩く

ですので、so many wordsはいい意味ではなく、言葉や情報の氾濫に対する批判に受け取れます。
人は言葉に何らかの意味を求めたり、数多の情報から世界を理解をしようとしたり、自分とは何かを知りたくて過去の名著と言われているものを読み漁ってみたりする、でもそんなのとっくにもう出尽くして今の世界では賞味期限切れで意味がない。

Suchmos

名言ばっか聞き飽きたよもう

(Stay Tune/THE KIDS

 

STAY TUNE

STAY TUNE

 

もざっくり簡単だけど言いたい事は同じだと思います。

 

言葉や情報に押しつぶされそうになっている人間の姿を歌っているようですが、案外これはぼくりり自身の事のような気がします。

 

でも、ぼくりりは歌詞でこうも言っています。

言葉で彩れば灯り灯る どんな景色でさえ永久に残る

ここでは、言葉は「善いもの」として捉えられています。
目で見た景色をそのまま記憶することはできないけれど、言葉にすれば、それを美しく残すことができる。
それはいつまでも色あせることがない。

 

音は濁るけど言葉は褪せない 終に変わらない光景を臨む

音は濁る、と言ってしまうところに、音楽でも音より言葉を重要視しているぼくりりの一面が出ています。
(デジタルの音は濁らないよ、こんなこと言ってトラックメーカーさん怒らんのぼくりりらしいけど)

一面では言葉を否定しているのですが、一面では言葉の力を信じてるんですね。
twitterでは「おなかへった」とか適当に言葉を弄ってる面もあるし、
歌詞は真剣にいいものを作りたい、できれば永遠不変の表現をしたいと思っている


so many wordsって叫ぶぼくりりの声聴いてると、言葉に押しつぶされそうになっているのはぼくりり自身の方かもしれないと思えて来ます。

前段では

僕ら言葉越しでしか解れない
ちっぽけな窓一つずつ塞いでいく

と言っています。
こっちはおそらくインターネットの世界かな。
「ちっぽけな窓」は、PCのウインドウ、スマホの画面
ぼくりりはtwitter好きみたいなので、「言葉越し」はtwitterSNSなどの文字情報


twitterで自分の思いを呟いてみるけど、次々来るツイートでタイムラインが埋まって、自分のツイートがどんどん流されて押し出されて行く様子をひねくれた言い方で「羽ばたいてく」としているのかな。

twitterやってないからこれは想像。

 

深読みすれば、
言葉でしか解れない、と思っていると、人と人との関係が閉塞状態に陥るということを示唆しているとも考えられます。
ぼくりりがそこまで考えてるかはあやしいです。

 

シンプルになった世界で羽ばたいてく

「羽ばたいてく」という言葉には何となく良さげな雰囲気がありますが、ここでは「シンプルになった世界」は決して肯定的なものと捉えられていないと解釈できます。

多分、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」のMV見ると一番この歌詞の世界わかりやすいと思う。
白い部屋の中に一人でいるやつね。鳥も飛んでるし。血も垂れる。

 


Jamiroquai - Virtual Insanity (Official Video)

あ、「血が垂れる」は次の曲「Noiseful World」に出てきます。

 

Noah's Ark

Noah's Ark

 

 

 

 

 

 

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